空への思い・キミへの想い

 

 

 

来週から始まる学園祭に向けて、少数の生徒が放課後残って作業をしていた。

その中でもミハエルは最後の企画の確認で、他の生徒が帰宅した後も更に残って

作業に集中していた。

講師から「もう、帰れよ~。電気消すの忘れんな」と声をかけられるまで、

外が真っ暗になってる事に気がつかなかった。

ミハエルは溜め息をつきながら、帰り支度をして教室を後にする。

まっくらな廊下が薄気味悪く、圧迫感があった。

企画する内容の中にはアクロバット走行もあって、演技する自分達を想像しながら

カタパルトを何気見上げると、先端に人影が見えた。

その人影は腰を下ろしているようで、二本の足がぶらぶらと宙に浮いてるように見える。

ミハエルはその人影がアルトだと気づくのに時間がかからなかった。

しかし、ミハエルはあえて声をかけず、そのままUターンをして校舎に戻り、

EXギアを装着して再び外に出た。

「おーい!アルトー!アルト姫―っ!」

自分の眼下で小さく見えるミハエルが大きく手を振っているのが見え、

アルトは眼を丸くする。

「ミシェル・・・」

ルルル・・・と携帯が鳴る。ミハエルからだ。

「おい、アルト。飛びたいんだろ?」

「え?」

いきなりのミハエルの言葉に、詰まるアルト。

「何も付けず、何も乗らず。そのままで・・・」

「ミシェル・・・お前、どうしたんだよ」

「飛びたいんだろ?」

「え?あぁ・・・うん」

「俺が受け止める。そこから飛べっ!」

携帯を耳に当てたまま、眼下のミハエルを見ると

ミハエルは親指を立ててサインをしている。

「なるべく高く、遠くへな」

「わかった」

アルトはそう返事をし、携帯をズボンのポケットに突っ込むと立ち上がった。

助走を付ける距離分、カタパルトの先端から身体を移動させ背筋を伸ばす。

大きく深呼吸をし「TAKE OFF」と自分自身を高揚させ、走り出した。

カタパルトの先端を強く蹴り、アルトは宙を舞った。

映像であるにせよ、眼の前に広がる夜空。

風がアルトを包み込む様に穏やかに吹き込んだ。

大きく両腕を広げ、全身で風を感じる。

もちろんそう長い時間、優雅に風を感じてる訳にはいかない。

身体がぐんっっと沈み込んだとたんに、アルトは落下し始めた。

ミハエルは背中に抱えているEXギアのタービンエンジンを吹かし、

地面を蹴ると地上に飛び立った。

アルトは地面が近付いてくると思わず眼を堅く閉じ歯をくいしばった。

ふわり・・・と再び宙に浮く感じを受け、そっと眼を開けてみると

ミハエルの腕の中にいた。

自分がダイブしたカタパルトよりも上昇するミハエルとアルト。

「どうでしたか?お姫様。」

ミハエルはアルトに視線を向けニッコリと微笑んだ。

「どうして・・・」

ドキドキと胸の鼓動を隠すようにアルトは俯く。

「俺のお姫様なんだ。考えてる事くらい分かるさ」

「俺のって・・・」

アルトは自分の身体の重さを少しでも負担をかけないようにと、

ミシェルの首に腕を巻きつけ抱きついた。

「おやおや。甘ったれだな」

「そうじゃない」

いや・・・そうかも・・・

自分を一番理解してくれているこの男に、甘えてる自分がいるのかもしれない。

「もう少し旋回すっか?」

「あぁ」

 

学校の周りを何回か旋回した後、ふたりはカタパルトに着地した。

ヘッドギアを外し、ミハエルはふぅと息を吐く。

「全くおまえは・・・」

アルトは呆れたような視線をミハエルに投げる。

「だって、全身にあふれ出てたぜ。飛びてーって。」

「あ、ありがとな  その・・・」

「いいって。気にすんなよ」

 

 

EXギアを身体から外し、小さく折りたたんだ後、ミハエルはアルトを促しカタパルトの

先端に並んで腰を下ろした。

 

「見てみたい・・・本当の夜空を・・・星を・・・」

アルトは切な気な瞳で夜空を見上げる。

「そうだな」

「こんなちっぽけで、窮屈な空なんか・・・」

「まぁ そう言うなよ。夢は持とうぜ」

ミハエルはアルトの肩に手を回し、自分の方に引き寄せた。

アルトも自分の身体の重心をミハエルに預ける。

 

「一緒に見に行こう。本物の空を・・・」

アルトの肩を抱くミハエルの手に力が入る。

「ミシェル、ありがとな」

「どこまでもお供いたします。姫・・・」

ふたりは微笑み合い、

やがて月明かりに映し出される個々の影が重なりひとつになった。

 

 

 

TOUCH DOWN-------------------------------------------------------

 

初めて書いたミハアルのお話しです。

本物の空に憧れる姫・・・

でも、アルトくぅん。本物の空を通り越して

宇宙を飛んでるんだから、個人的には「貴方は凄い!」と

言いたいですけどね・・・

仲良しなふたりをもっともっと書いていきたいです。

お粗末さまでした!

                        2008/10/19 るきと