焦る気持ちとキミの瞳

 

 

早乙女アルトは空を仰ぎ、溜め息をついた。

空へ一歩近付いたと思ったSMSへの入隊。

しかし、空を飛ぶどころか、自分の翼となろうとしてる

バルキリーに触る事すらできない日々が続いていた。

毎日の訓練ときたら陸上での訓練が多く、体力も限界にきている。

10kgの土嚢と5kgの小銃ををかついで

1日走るとか、指が固まる程の射撃訓練とか、ドロドロの土の上を

這うように進むほふく前進や銃剣道、剣道、徒手格闘・・・

衛生知識まで叩き込まれる。

ようやく上空に行かれたかと思ったら、落下訓練。

コントロール・スティックを握るのもシュミレーション用だけだ。

どれだけ体力を使い果たせば、バルキリーに乗ることが

できるんだ・・・

厳しい訓練にいささか嫌気がさしてきていた。

しかも学校との両立が自分の中でハンパなく辛くなってきていた。

こんな事をミシェルは文句も言わず、

よく何年もやりこなしてきていると悔しいけど感心した。

悶々としながらも視線は彼方空へむいていた。

 

「なんだよ、ウカナイ顔して。美人が台無しだな」

声がする方にだるそうに視線を向けるとミシェルが立っていた。

「当たり前だよ。いつまでこんな事してなきゃなんないんだ」

「仕方がないだろ?命が懸かってるんだぜ。基本を叩き込むのは

当たり前だ」

「お前はバルキリーを乗り回してるからそんな事言えるんだ」

ミシェルはハァと小さく息を吐き、アルトの腕を力強く掴むと、

自分の方に向き直らせた。

「甘ったれた事いうなよ。俺だって、オズマだってみんな

はじめはそうやって来た。アルト、お前だってそうだったろ?

いきなり舞台に上がって演技したのかよ。基礎を学んで、練習に

練習を重ねて舞台に上がっただろ?」

「・・・・・」

アルトはミシェルの言葉にはっと息を呑んだ。

確かにその通りだ。

空への気持ちが急くせいで焦りばかりが空回りしていた。

「焦るなよ。空は何処へも行かないさ」

ミシェルは優しく微笑みアルトを見つめた。

エメラルドグリーンの瞳はふんわりとアルトの気持ちを包み込んで

いた。

「ごめん・・・早く飛びたんだ。ミシェル・・・

お前と一緒に高い高い空(宇宙)を・・・」

「大丈夫だよ。待ってるから」

ミシェルの短い言葉がアルトの胸の奥に閊えたものを

取り除き、アルトに笑顔を取り戻した

「うん」と微笑むアルトをミシェルはそっと自分の胸に

引き寄せた。

 

 

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◆あとがき◆

2009年2月の日記に上げたショート妄想テキストでした

本編の姫があまりにも苦労せずにトントンとパイロットになったのが

個人的には不満でした

パイロットなんてそうそう簡単になれるもんではありません

しかも全く関係のなかった歌舞伎界の人間が、こんなに簡単にパイロットなんて

ありえないので、ちょっと姫をいじめたくなりました。へへへ・・・ごめんね。姫。

そこでミシェルの愛がフォローするのが萌えポイントだと思うのだvv

 

2009・2・11日記UP  るきと