■プチStory  No.1



リナリーが無線ゴーレムからのコムイの声に呼ばれて部屋を後にして、

神田はようやくゆっくり集中できるとほっとして座禅を組みなおし、眼をとじた。
時間がゆっくりと過ぎていく中で心を清めていると、

靴音と共に聞きなれた声が聞こえてきた。
「ユウ こんなとこにいたさ」
神田は眼を閉じたまま聞こえてない振りをする。
また、この男か、と思いつつも声をかけられるのは悪くない。
「何してるさ?おっかない顔して・・・」
「ねぇ ユウちゃん」
「なんか言ってさぁ」
ラビは座禅を組む神田の前にしゃがみ込み、

膝の上に両肘を付き手のひらに顎をのせじっと神田の顔をみる。
「ねぇ ユウってば!」
いくら声をかけても、返事をしてくれない神田にラビはふくれっ面になる。
「いいよ!もうっ」
ラビは眼をつぶる神田の顔に、自分の顔を近付ける。
ピクリとも動かない神田の瞼を確認し、触れるだけのキスをした。
流石に神田もびっくりして瞼をあけ、眼の前のラビを直視する。
「おいっ!集中できねぇじゃねーか!」
「返事もできないの?このコは」
「ふざけんなっ!」
「ちゃんとお返事が出来ないコはお仕置きさぁ」
ラビは神田を抱き寄せる。
「き、貴様・・・」
「ユウ・・・その胸の字・・・大きいままさ・・・
 心配なんさ。ユウの命の残量・・・」
袖のないシャツから見える、神田の左胸の梵字をみたラビは

神田の肩に顔を埋めながら弱々しい声で言う。
神田はラビの背中に腕を回し力を入れ、

「お前は何も心配する事はない」とラビの耳元で小さく囁くように言った。
ラビは顔を上げ、神田の瞳を見つめた。
「傷はよくなったのか?」
「ウン。」
ラビは神田の背中に回している手で神田の髪を撫でる。
髪紐に手をかけ、「これ、似合ってるさ」といいながら指で撫で遊ぶ。
「ラビ・・・」
「ン?」
「すまない。いつも・・・」
「なんさ?いきなり」
「そう思ってるからそう言った」
「ンもぅ。ユウはいつもそうさ・・・」
ラビは撫で遊ぶ髪紐を引っ張り、結いを解く。
神田の髪は素直に肩へと降り自由になる。
ラビはそのまま自由になった神田の髪に両手を滑り込ませ指を絡ませた。

そして神田の後頭部をてのひらで覆い力を入れて自分の方に引き寄せる。
「もう、ユウと離れたくないさ」
「俺もどうやらそのようだ・・・」
「もっと素直な事、言えないの?」
引かれ合う唇が重なりあい、相手への想い全てを唇に集中させる。
お互いに左右に向きを変えながら唇をついばみ、吸い上げる。
ラビの舌は神田の口内に入り込み神田の舌を吸い上げる。
「う・・はぁっ・・」
絡み合う舌と舌に呼吸が荒くなる。
「ラ・・・」
「ン・・?なに?」
何か言いたそうな神田の唇をラビはなかなか解放してくれない。
口づけを交わしていても、もう離れたくないという気持ちが昂ぶり、

気がつくとラビの頬に一筋の涙が流れる。
ようやく唇を離すと、ラビの頬に神田はそっと細い指先で涙を拭った。
「お仕置きしてる方が泣いてどうする?」
「う・・・ん」
「お前はやっぱり馬鹿ウサギだな」
神田は髪紐をラビの右手首に結び付け、手の甲にそっとキスをした。

 

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2007/11/26(月) ユウの結い紐 より

 

本誌の座禅を組むユウ。リナリーと幼馴染みという事がわかりましたよね。

このお話しは「てのひら恋箱」のPRコピー本にコミックにしました。